「CIM ― 注目される、その展開と可能性」連載特集(1)

By 池野隆(Takashi IKENO)
(掲載 11/27/2013)

 近年、社会資本整備など建設分野の情報化に関連して熱い注目を集めるトレンドの一つにCIM(Construction Information Modeling/ Management)がある。そのベースとなるのは、もともと建築分野で普及が進むBIM(Building Information Modeling)だ。

 CIMでは、建設事業の調査・計画から設計、施工、維持管理、さらに更新に至る各段階を通じ、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を駆使。一連のプロセスで関係する情報を一元的に共有・活用することにより、建設の各段階における効率性の向上、公共事業の品質確保やトータルコストの縮減などさまざまな効果の実現を目指す。つまり、建設事業のプロセス全体での生産性向上に繋がる新しい建設管理システムを構築しようというもので、その中核には3次元(3D)モデルが位置づけられる。

 そこに込められた狙いや可能性、あるいは公共事業のライフサイクルにわたるプロセスを通じICTをキーとした新しい仕組みを導入しようという考え方など、CALS/EC(Continuous Acquisition and Life-cycle Support / Electronic Commerce:公共事業支援統合情報システム)の次なるパラダイムを想起させる要素は少なくない。ただ、国土交通省がトップダウン的に推進し、同省直轄の全事業をはじめ広く公共事業を対象に壮大かつ全く新しいシステムへの移行を目指したCALS/ECのケースとは、ICT活用環境や公共事業を含む社会環境の変化を反映し、その具体化アプローチやウェートの置かれ方などにおいて異なる展開も窺われる。

 そこで本Webマガジンでは連載により、そうしたCIMに関連したさまざまな取り組みや話題に焦点を当てながら、その将来方向やCIMによってもたらされるであろう可能性などに迫る。


CIMの概念整理から、今後の展開を視野に試行を通じた課題検討へCIM技術検討会の活動成果と新たな取り組み


(一財)日本建設情報総合センター 建設情報研究所 研究開発部 グループ長
笛田 俊治 氏
 CIMが今日のようにわが国で指向されてくる大きな契機になったものとして、(一財)日本建設情報総合センター(JACIC)建設情報研究所研究開発部グループ長の笛田俊治氏は昨春のJACICセミナーなどを通じ前国土交通省事務次官(当時、技監)の佐藤直良氏が説いた「CIMのススメ」の考え方を挙げる。

 笛田氏はとくにそこでの、基準など制度面をまず固めてからというような従来型の手法に囚われず、試行工事などで実際にCIMを導入してみて、課題が見つかればそれらの解決を図っていく、といったスタンスに注目。現時点では不確定な要素がまだ多い、と前置きしつつ、トップダウンで国交省直轄事業をはじめとする広範な公共事業に適用されてきたCALS/ECにおける具体化プロセスとの違いにも触れる。

 つまり、CALS/ECを継承する次なるステップのようなイメージがともすると先行しがちなCIMだが、昨年度から取り組まれてきたCIM技術検討会の活動などを通じ、その概念はようやく次第に整理されてきたところ。現在は実際にCIMを使うのと並行し、それによってもたらされる可能性やそこでの課題、必要になる仕組みなどを検討・探索する試みが続けられている。したがって、その公共事業における位置づけや活用の展開方向が明確な形になってくるのはもう少し先になろうという。

CIM、JACICの新たな重要業務に

 JACICは、産学官と連携し、建設分野の情報化に関するさまざまな事業を実施している。そうした柱の一つ、CALS/ECに関するこれまでの取り組みの経緯もあり、現在はCIMを新たな重要業務に育てていこうとの流れにある、と笛田氏は語る。

 そのような一環として昨年4月のJACICセミナーでは、前述の「CIMのススメ」を基調講演に、「CALSの15年を振り返り、新たなステージへ 〜建設生産システムのイノベーションに向けて〜」のテーマを冠し、構成された。

 次いで、同年7月にはJACICが呼びかけ、関係する11団体とともに「CIM技術検討会」を設立している。新しい建設管理システムを構築するCIMの実現に向け、3Dオブジェクトなどの活用に当たって求められる広範な技術的検討を行うことを当面のターゲットとして位置づけ。JACIC自らその事務局を務めてきた。
 

Top Page

Continued

1

2

Next >

3

4

5

6

リンク|
サイトマップ|
 お問い合わせ
 次ページへ続く

Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment

WritingSolutions
WebMagazineTitle
Forum8-1
WMVR
掲載記事・写真・図表などの違法な無断転載を禁じます。
Copyright
©2011 The WrightingSolutions Ltd. (http://www.wsolutionsjp.com/) All rights reserved.
Webマガジンの特集カテゴリ

CALS/EC
VR(バーチャルリアリティ)
その他