「CIM ― 注目される、その展開と可能性」連載特集(2)

「第2回 データモデルセミナー」(土木学会・道路業務プロセスモデル検討小委主催)リポート

道路事業向けプロダクトモデルおよび業務プロセスモデルの構築へ ― 道路データモデルの提案アプローチ(4)

「活用事例の収集・整理」
道路業務に関するプロセスモデル、その活用の現状と課題


2)設定した道路業務プロセス段階で、道路と類似する他業界で活用されるプロセスモデル事例

 二つ目の「設定した道路業務プロセス段階で、道路と類似する他業界で活用されるプロセスモデル事例」では、丸山氏は「建築業界におけるBIM(Building Information Modeling)」について解説する。BIMは、建物の3D形状情報に加え、材料や部材など、それに関わる各種属性情報を統合する建物情報モデルをコンピュータ上に構築。そのモデルの、建築ライフサイクルにわたる活用を通じ、建築生産や維持管理における効率化が期待されている。

 建築業界はとくに、調査〜施工、場合によっては維持管理までプレーヤーが同じ(つまり、大手建設業者が一貫して当たる)ことから、フロントローディング(Front Loading:業務の初期工程(設計)に負荷をかけ、後工程で生じそうな仕様の変更などを事前に検討することで品質向上や工期短縮、コスト削減などに繋げる)が機能しやすい環境にあり、BIMの導入が進んでいる一因になっている、と同氏は見方を示す。

(画像は土木学会・道路業務プロセスモデル検討小委員会提供)

3)道路業務プロセス全般的に利用されるデータベースの事例

 三つ目の「道路業務プロセス全般的に利用されるデータベースの事例」として、丸山氏はまず、「道路事業における基盤地図情報の整備・更新・流通」を挙げる。CALS/EC(Continuous Acquisition and Life-cycle Support/ Electronic Commerce:公共事業支援統合情報システム)の電子納品の仕組みを活用し、道路基盤地図情報を整備。工事施工〜維持管理におけるデータ流通のプロセスモデルが構成されている、という。

 また「3次元地盤モデル・パネルダイヤグラム」は、ボーリングや地質平面・断面図などのデータを基に、3D地盤モデルやパネルダイヤグラムを作成するもの。同氏は、道路業務プロセスの参照など、道路を設計する上で有用なさまざまな活用の可能性にも触れる。

(画像は土木学会・道路業務プロセスモデル検討小委員会提供)

活用事例に見る現状と課題

 道路業務プロセス全体を一気通貫するようなデータモデルは存在していないのが現状。ただ、道路業務プロセスの段階レベルを流通するデータは、アウトプットされるデータが次の段階でインプットとして利用されることが多い。

 一方、道路業務では業務の段階ごとに地形データや地質データなどで異なる精度・寸法が存在。そのため同じデータモデルを使えないケースがあるなど、プロセス間の連動を困難にしている面がある。加えて、道路を形作る土木幾何の特異性がプロダクトモデルの構築を困難にしている。つまり、土木幾何には2.5次元の世界があり、それを3Dモデルで表す時に若干の不具合を生じることがある ― 。

 収集した道路業務に関するプロセスモデルの活用事例を基に、丸山氏はプロセス間の連動に通底する特性と浮かび上がる課題をこう描く。


道路業務プロセスモデルの構築へ

 その上で同氏は、WG4による検討を通じ形成されてきた「道路業務プロセスモデルの構築イメージ」へと話を展開。「羽田野さんのお話(前号、Vol.18(3)、p.3)とも重なるのですが」としつつ、「道路プロダクトモデル」が真ん中にあり、それを参照するような「参照データベース(DB)」が必要。また、それらのプロダクトモデルやDBと、各業務プロセスとの間でデータが流通するためには各道路業務プロセスにそれぞれオブジェクト単位でアクセスする必要がある、と説く。

 そこではさらに、1)地形データや地質データなどの参照データが必要な精度で取り込める環境、2)「道路プロダクトモデル」は(前述のような)3Dと少し異なる土木幾何に対応し、材質や仕様をはじめとする属性情報を入力できること、3)道路業務プロセスの各段階で、その時点の「道路プロダクトモデル」から業務に必要なオブジェクトを生成し、かつ業務アウトプットがオブジェクトを介して「道路プロダクトモデル」に還流する仕組み ― などが求められるとする。

 「データ流通重視で『プロセスモデル』を考えると、どうしても道路中心線形等のコアな部分だけが流通するようなイメージになると思うのですが、(前述の)フロントローディングで皆(道路業務の全プロセスのプレーヤー)が最初(業務の初期工程)から参画するような時代になれば『道路プロダクトモデル』としての進化に繋がっていくのではないか、という気がしています」

 以後も引き続き、道路業務に関するプロセスモデルの活用事例を収集しながら、あるべき「道路業務プロセスモデル」について検討を進めていくという。

(画像は土木学会・道路業務プロセスモデル検討小委員会提供)

Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment

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