建設業のための情報通信技術のトレンド ― 過去、現在、そして今後
Trends in Information and Communication Technologies for Construction:
Past, Present, and Future
さらに、このBIM成熟度モデルの考え方を、前述の採用曲線の考え方と組み合わせて見せる。同氏はそれぞれのBIMレベルごとに、異なる技術の採用曲線と対比。例えば、Level 0の技術採用曲線は冒頭で触れた2D CADのそれとほぼ同様の形をなす。Level 1の技術採用曲線は既に普及が達成段階に近いことを示す。Level 2は実際に本来のBIM利用を表していると言え、2012年時点での採用率は30%前後と推定。Level 3については、おそらくまだ本格的な技術導入曲線は始まっていない、との考えを述べる。
統合型BIMのイメージと今後の展開
では、Level 3のBIMがどのようなものになり、それはいつ頃実現してくるのか。フローズ教授はまず、統合型BIMではおそらくすべてを包含するような単一の共有BIMモデルといったものを伴わない、と切り出す。
その上で、英国のBIM標準(AEC (UK) BIM Protocols)が意図するiBIMの考え方を踏まえ、そこには複数の分野にまたがるいくつかのBIMモデル(multiple discipline-based BIM models)が存在。オリジナルデータ、すなわちマスター版のデータはオリジナルのBIMソフトウェアに保持される。また、それぞれのモデル間では特定の、慎重に管理されたデータ交換を実施。その際、マスターデータを共有するためではなく、それぞれのモデルの内容を伝達するために、情報がそれらのモデルからエクスポートされる。そして、異なるユーザーやBIMモデル間で、更新や他の関係者のモデルにおける変更依頼などを通知するため、メッセージの送受信が行われる ― といったイメージを描く。
ただ、BIMの今後の展開の中で、こうした技術がいつ実現するかを予測するのはかなり困難としつつ、同氏はまず、Level 2のBIMについては、技術採用曲線上の現時点の位置を推定。その曲線の延長上に今後の普及の流れはある程度予測できる、とする。
一方、Level 3のBIMについては、前述の技術の大半が現在パイロット事業において利用可能な段階にある。したがって、もっと統合化の進んだBIMに関する市場の導入が間もなく始まってこようと予測。そうなれば、Level 3のBIMに関する技術採用も標準的なレベルになってくるものと期待を示した。
(画像はトーマス・フローズ氏 提供)
(Images provided by Thomas Froese)
Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment
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