英国ケンブリッジにある講堂（lecture hall）でかつて講演を行った際、その火災安全に関心を持った経験から、そこを対象に設定。自身が講演中に建物内で火災が発生したらどうなるか、という想定でシミュレーションを行った。
まずSMARTFIREを使い、講堂の火災を表現。温度（熱）や生成される有毒ガス、ばい煙濃度などの火災による危険性を可視化している。
次いで、それをEXODUSと連結。例えば、講堂の1階（ground floor）には人々がおり、階段を上っていくと2階では自身が講演を行っている。そこに、建物内で火災が発生すると、人々は避難を開始。一方、消防隊長（fire marshal）らは講堂を駆け回り、建物内に人が残っていないか確認するため、階段を降りてくる人々の流れに抗して上っていく、といったシーンがvrEXODUSで表現される。
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| 重大な結果をもたらしたロードアイランド州ディスコ火災の避難シミュレーション。SMARTFIRE で火災をシミュレートするのと併せ、buildingEXODUSは避難をシミュレートするのに使われた。火災シミュレーションの結果は、避難シミュレーションと連結。そこでは実際の火災と同様に、多数の人々の行動を可視化するエージェントが熱や煙、有毒ガスにさらされている。 Evacuation simulation of the fatal Rhode Island Disco fire. buildingEXODUS is used to simulate the evacuation while SMARTFIRE is used to simulate the fire. The fire simulation results are coupled to the evacuation simulation, exposing the agents to heat, smoke and toxic gases, as in the actual incident. （画像はエド・ガレア氏 提供／(有)ライティング・ソリューションズ 訳） （Images provided by Ed Galea／Translated by WritingSolutions Ltd.） |
最後に、冒頭で触れた米ロードアイランド州のナイトクラブ火災を題材として、まずSMARTFIREを使って行った火災のシミュレーション例を挙げる。実情に即し、ステージ上から出火した後、短時間のうちに摂氏500度以上の致命的な煙が建物の構造を通じて広がっていく様子が秒刻みで再現される。
次いで、EXODUSによる避難シミュレーションをその火災シミュレーションに連結。モデル内で多数の人々の行動を可視化するエージェント（agents）が煙の下を這って逃げ、あるいは窓を割って脱出しようとする様子、それでも有毒ガスにより多くの人が犠牲になる様子が見える。
これらの火災および避難のシミュレーションから、84人が亡くなると予測。一方、実際の火災では100人が亡くなっており、驚くほど実態と近い正確さで予測結果を得られた、と同氏は位置付ける。つまり、火災のメカニズムや建築材料、人間行動といった非常に複雑な環境の中で、これらをシミュレート。極めてリアリスティックなアウトプットを生成したことで、フォレンジック分析への同手法適用の可能性に期待を示す。
