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buildingEXODUSによる、混雑する地下駅の避難シミュレーション
buildingEXODUS simulation of the evacuation of a busy underground station.
(画像はエド・ガレア氏 提供/(有)ライティング・ソリューションズ 訳)
(Images provided by Ed Galea/Translated by WritingSolutions Ltd.) |
EU出資のプロジェクト「Getaway」の一環として取り組まれた実験では、矢印部分が点滅する新しいタイプの標識を使用。その結果、標識を見た人の割合が前述の従来型標識を用いた例の39%から85%へと大幅に改善。そのすべての人が標識の指示に従うなど、新しい標識のアフォーダンス向上の可能性を確認している。
この大規模プロジェクトではさらに、ロンドンの地下鉄駅およびスペイン・バルセロナの駅での避難に関する実物実験(full scale experiment)へと展開。通常の状態の各駅で人々がどのように避難するか、次いで、すべての標識を点滅型の標識に置き換えることで避難の効率性がどの程度向上するか、を調査していく考えという。
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同氏らは多層階の病院を対象に緊急時、運動機能に障害のある人をどう避難させるか、それをどうアシストできるか、といった研究も実施している。
具体的には、ベルギー・ゲント大学病院(Ghent University Hospital)を舞台に、11階のフロアから病院スタッフが運動障害のある患者の避難をアシストする実験を行った。まず、男性および女性の病院スタッフから成る2チームを編成。併せて、避難をアシストする器具として、@階段避難用車椅子(EVAC+CHAIR)Aストレッチャー(stretcher)Bキャリーチェア(carry chair)Cドラッグ・マットレス(drag mattress) ― の一般的な4タイプを想定。それぞれ、@運動機能に障害のある患者を椅子から当該器具へどのくらいの時間で移すことが出来るか(準備時間:preparation time)A当該器具を使ってどのくらいの時間で階段を降りられるか(水平移動速度:horizontal walking speed、垂直移動速度:vertical speed)B当該器具を使った場合、階段から避難しようとしている他の人々にどのような影響を及ぼすかC状況に応じた当該器具の操作に必要な人の数 ― を計測。そのため、計32回の試行が重ねられた。
そうした中から、一人の避難に要する準備時間は階段避難用車椅子を使った場合が最も早く、ストレッチャーの場合の半分以下。水平移動速度は、オペレーターが男性であれば階段避難用車椅子とキャリーチェアはほぼ同程度だが、女性であれば後者が最善。垂直移動速度は、階段避難用車椅子とキャリーチェアが最も速く、普通の人が階段を降りるのと同程度の速さも可能。とくに階段避難用車椅子では、男女のオペレーターの平均速度は同程度で、他の器具が大きな性差の影響を受けるのに対し、男女いずれの操作も問わない機能性が際立つ。
また器具の操作に要する人の数では、ストレッチャーが4人、キャリーチェアが男性なら3人・女性なら4人、ドラッグ・マットレスが2人、階段避難用車椅子が一人。このこととも関連し、背後から階段を降りてきた他の人たちは、ストレッチャーが使われている間、道を塞がれてしまうため避難が遅れるのに対し、階段避難用車椅子が使われている場合は容易にその横を通り抜けていけることが分かった。
同氏らは同実験で集積したデータをEXODUSモデルに組み込み、病院内を28人の患者とともに異なる器具を使って避難する様子をシミュレーション。例えば、すべての患者の避難には、階段避難用車椅子を使うと1時間半、ストレッチャーを使うと3時間半を要するものと予測された。同病院にはもともと昼間7人いる避難に動員可能なスタッフが夜間は4人になることから、複数のオペレーターを要する器具を使う場合、夜間の避難にはさらに時間がかかってしまうことも想定できる。
これらの成果を踏まえ、同氏らは病院の避難計画作成への今回実験データ利用の可能性に着目。EXODUSの新バージョンでは避難用器具ごとのモデル化への対応も進めている。
Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in
Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment
■ 都市規模での避難や群集行動とHybrid EXODUSの開発
同氏が最近注目している研究の一つが、これまで開発してきた避難モデリングツールでの点群データ(point cloud data)の活用だ。そこでまず、自身の学内オフィスから廊下、エレベーターに至るシンプルなアプローチを、点群データを使い表現した例を示す。
次いで、buildingEXODUSを使って行った、オフィスから4人のスタッフが避難する様子のシミュレーションに言及。その際、EXODUSソフトと点群データの間でデータをやり取りする機能を開発し、EXODUSの避難シミュレーションからデータを取得、それを点群データによる表現に組み入れている。
同氏はこうした手法が、避難の状況についてトレーニングするツール向け、あるいは消防士のような現場で最初に対応する人(first responders)の状況把握向上などに役立つのでは、と位置付け。二三年のうちにも、その機能を実践的なツールとして開発したい考えを述べる。
「Hybrid EXODUS」は、EXODUSで通常使われるファインノード(fine node)に加え、コースノード(coarse node)を連携して活用することにより、単一のモデルの中で精緻な表現と粗い表現それぞれのメリットを活かし、連続的な空間の表現も可能にするもの。
つまり、ファインノードではより正確な形状を表現できるが、その分、連続的な空間に対しては計算量が大きくなってしまう。コースノードは前者と比べて精度は下がるものの、計算作業を軽減できる。そこで同氏らは、広大な空間のモデル化にはコースノード、ディテールが必要な部分のモデル化にはファインノードと使い分け、それぞれのメリットを連携できる機能(Hybrid EXODUS)を開発。とくに、都市環境のような空間や大規模かつ複雑な構造物をモデル化するケースでは、この手法が効率的なアプローチになる、と説く。
The Latest Research on Fire Analysis and Evacuation Analysis and Case Studies