建設PMの広範な対象領域とVR利用

 アブデルハミード氏は発表の冒頭、建設現場のPMで広範な領域がカバーされることに言及。それに付随し、当該プロジェクトに取り組む中で予算やスケジュール、品質、安全、技術、その他の方策といったさまざまな問題への対処が求められることになる、とする。

 そうしたプロセスにVRを用いることで、同氏はすべてにおいてではないと断りつつも、リアリティを持った環境下で意思決定を成し得るメリットに注目する。

 そこで前回「World 16」の研究では、建設プロジェクトのスケジュールを設定するプロセスに3次元(3D)リアルタイムVRソフト「UC-win/Road」で作成したVRを連携。3Dモデルの移動で表現される各種シミュレーションのアニメーションを再生する「マイクロシミュレーションプレーヤー(Micro Simulation Player)」を使い、建設のスケジュールやレポートを動的に可視化。さらに、XMLファイルを介し建設プロセス内の変更をUC-win/Roadで反映して容易に可視化するなど、4DのPM支援ツールとしての可能性を、サンプルを交えながら解説した。

PM支援ツールに対する今回研究の視点
 建設現場のPMでは現在、さまざまな領域でそれぞれ独自の機能を提供するソフトウェアが使われている、とアブデルハミード氏は語る。

 その上でポートフォリオマネジメント(Portfolio Management)、プログラムマネジメント、プランニングおよびスケジューリング、リスクマネジメント、リソースマネジメント、コストマネジメントなど、多岐にわたってPM支援ソフトが求められる作業を挙げ、各ソフトに応じて異なるカバー領域を対比。併せて、複数ソフトにより作成された表形式のアクティビティ・リストや先行タスク/後続タスク(Predecessor/Successor)などのレポート、グラフィックス表示の各種サンプル、建設状況(construction status)を把握するために作成されたソリューション例を示す。

 一方、今回の研究に当たってはデータベースを構築し、建設現場に関するデータを扱うために、汎用的なデータベース管理ソフトのMicrosoft Accessを採用している。

 これについて同氏は、その使い勝手やコスト面に加え、プロジェクトのタイプや予算、期間、スケールの違いに関係なくモニタリングで求められる多彩な情報に適応して調整(adjust)できるメリットを挙げる。つまり、他のPM支援ソフトでももちろん、そういった仕事は可能だが、今回研究ではとくにフェーズ(phase)を越えてデータを変えたり、データを取り出したりするニーズに注目。そうした際の、容易に調整できる機能面にウェートが置かれたという。

Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment

バーレーン大学 工学部 建設学科
アシスタントプロフェッサー

ワーイル・アブデルハミード

Wael Abdelhameed,
Assistant Professor, Department of Civil Engineering & Architecture, College of Engineering, University of Bahrain


(写真は潟tォーラムエイト 提供)
(Photo provided by FORUM8)

 建設プロジェクトへのVR(Virtual Reality)適用の可能性を探る研究に、バーレーン大学(University of Bahrain)工学部建設学科アシスタントプロフェッサーのワーイル・アブデルハミード氏は継続的に取り組む。

 前回(2010年度)「World 16」プロジェクトでは、建設現場(site)のプロジェクトマネジメント(Project Management:PM)においてVR利用がもたらす可能性に着目。とくに、スケジューリング(scheduling)およびレポーティング(reporting)にフォーカスし、VR適用の具体的なメリットついて探っている。

 2011年度の同プロジェクトに当たり、同氏はその適用対象を拡張。建設現場のPMにおけるモニタリング作業へのVR導入をテーマに掲げた。

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「第5回 国際VRシンポジウム」リポート(6):<World16>(2011年)研究発表4
Report on the 5th International VR Symposium (6) : The 4th Presentation of “World 16” 2011

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建設プロジェクトのモニタリングにおけるVR活用
VR in Construction Monitoring

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(掲載 11/2/2012)
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