「中綱南側土砂採取事業自主簡易アセス」
㈱マテリアル白馬
県の環境影響評価条例の対象に該当しない小規模な土砂採取事業で、景観などの変化に関する地元住民や一般市民への説明責任を果たすため、マテリアル白馬は当該事業をVRでシミュレーション。その成果は、実際に住民説明会やWebを介した意見募集で活用されているという。作品ではまず、周辺エリアにおける採石場の位置付けを俯瞰。次いで、周辺地区からの見え方、周辺地区における日照の変化と事業による影響、将来の植生対策のイメージなどをさまざまなアングルから確認できる。
ノミネート賞
「事故危険交差点の改善およびDSLogを用いた効果分析」
韓国交通安全公団
韓国・江原道（Kangwon Province）の襄陽3通り（Yangyang street No.3）では、傾斜路による事故が多く発生。併せて、その幾何構造の問題から、交通量の割にしばしばボトルネックを来している。また、忠清南道（Chungcheongnam-do）論山市（Nonsan city）には特異な形状を有する5通り（No.5）があり、やはり交通事故が多発しているという。そこで、韓国交通安全公団（Korea Transportation Safety Authority）ではこれらの交差点に起因する問題を改善するため、合流交通（merging traffic）、路面標示（road marking）、交通信号、停止線位置などの、現状および改良案をVRで作成。シミュレータによる走行実験を行い、DSLog値を分析することで、それらの改善効果を確認。さらにその成果は、意思決定や住民説明会のプロセスに活用されてきた。
今回の作品では、襄陽と論山の2交差点について交通をシミュレーションし、それぞれの改良前後を比較・確認できるよう意図。したがって、それぞれの交差点における複数の改良ポイントをイメージとして対比、ドライバーの視点から動的な環境の中で実際の改良効果も体感できる。
ノミネート賞
「パイププラント設備シミュレーション」
日下部電機㈱
パイプミルやその関連設備の設計製造を行う日下部電機は、主に海外の顧客向けにプラント設備を販売している。その際、設備の組み合わせ次第でプラント全体の大きさが異なることもあり、従来のようなパンフレットのみでは、顧客にどの程度の規模のプラントを納品可能か理解してもらうのには制約があった。そこで、プラント設備を可視化、機械が稼働する様子も確認できるようVRデータを作成している。作品は、作業員が配置されてパイプ関連機械設備が稼働している全景から、①パイプが1本ずつリフト・コンベヤーで搬送され、②パイプが整形コンベヤーで搬送されて結束機内に並べられ、③並べられた結束パイプが運搬車で運び出される ― という一連の様子を動的に再現。それらは斜め上から俯瞰する視点や水平方向からの視点で、さまざまにアングルを変えながら確認することも出来る。
ノミネート賞
「愛知県新城市出沢地区の土砂災害シミュレーション」
福井工業高等専門学校
緑と清流に恵まれた愛知県新城市出沢（すざわ）地区。しかし、そこでは過去に土石流が発生しており、2009年には愛知県が土砂災害警戒区域の一つに指定。防災体制の構築が求められてきた経緯がある。そうした背景から、福井工業高等専門学校では同地区における土石流の危険性を説明するため、地域の詳細地形と複数の建築物をVRで再現。豪雨を受け、土砂災害が複数箇所で発生する状況や災害発生の段階を分かりやすく可視化した。
作品のベースとして、降り続ける雨の向こうに、いくつかの家屋が点在する山間部の集落が表現される。地上近くにアングルを転じると、突如、揺れが起き山の中腹で土砂崩れが発生。その後、小川が堰きとめられるのに続き、それは次第に発達していき、ついには土石流となって下流の家屋などを埋め尽くしていく。この集中豪雨による土砂崩れを原因とする土石流発生のメカニズムは、視点を変えて確認することも可能になっている。
