ハーバード大学大学院 デザインスクール 准教授 コスタス・タージディス 氏 Kostas Terzidis, Associate Professor of Architecture, Graduate School of Design, Harvard University (写真は潟tォーラムエイト 提供) (Photo provided by FORUM8) |
ハーバード大学(Harvard University)大学院デザインスクール准教授のコスタス・タージディス氏が発表した2011年度「World 16」プロジェクトの研究は、「eパーキング・シミュレーション(e-Parking Simulation)」。「第5回 国際VRシンポジウム」(2011年11月16日)開催時点ではまだ研究が進行中と断りつつ、その構想に至る背景や「eパーキング」のコンセプト、そのもたらすメリット、アプリケーションの構成とそこでのVR(Virtual Reality)適用などについて、実際の利用シーンのシミュレーションを交えて紹介した。
同氏は、同大で教鞭を執る傍ら、ザ・ミーム(THE MEME、米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)の研究開発機能をリードする。
この、遺伝子が進化する仕組みと類似したアプローチにより人々を媒介しながら進化・伝播していく、文化を形成する情報を意味する概念(ミーム:meme)を社名に冠する会社には、多様な分野で優れた専門性を発揮する10数名のメンバーが参加。同氏らはそこで、ユーザーが知覚する体験にウェートを置くユーザーエクスペリエンス・デザイン(user experience design)に関するコンサルタント業務を行い、各種デバイスの将来を探索している。
前回のパーソナル・インフォマティクスにフォーカスした試みを受け、2011年度の「World 16」プロジェクトに当たり、同氏らはUC-win/Roadを活用したビジネス機会の創出を着想。その具体的なターゲットとして、自ら取り組んできた「eパーキング」との連携が位置づけられた。
都心部へ車で行き、駐車しようとしても、すぐに場所を見つけることは難しい。多くの場合、ドライバーは車で近くをしばらく周回し、駐車する場所を探し回ることになる。
そのようにしてようやく適した場所を見つけたと思っても、目の前で誰かに先を越されてしまうかも知れない。また、駐車場所を得たとしても、今度はある時間内にそこを出なければならないというプレッシャーに追われる。しかも、せっかく苦労して確保した非常に条件の良い場所も、そこから車を一旦出してしまうと、他の車によってすぐに占められ、改めて場所をめぐる激しい獲得競争に曝されることになる。
一方、実際に駐車できる場所は必ずしも望み通りのものになるとは限らない。それであれば、多少のコストを払っても、しかるべき時に一定の条件を満たすスポットに駐車場所を得たい、というニーズはあるはず。あるいは、自分の使いたい時間だけ駐車し、その場所を離れた後は次にやってくるドライバーにそこを提供することで多少のお金を得られるような仕組みを実現できないか、と考えられた。
そうした観点からソリューションとして描かれたのが、タージディス氏自ら「(アイディアとしては)非常にシンプルであるが、同時に複雑(な仕組みを実は要する)」と形容する「eパーキング」だ。
その基本的な仕組みに触れる前段として、同氏は駐車場を見つけるのが非常に難しく、自身が日ごろ場所を求めて車でぐるぐる走り回っているというマサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード大学近郊の地図を示す。そこには、ターゲットに向かって進んでいく自車の位置が映し出され、ターゲットの周辺にクローズアップしていくと、他の車が出ることなどにより利用可能になる複数駐車スポットの情報が位置とともに表示される。
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Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment
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