2010年のWorld 16プロジェクトと並行し、小林佳弘氏は「Build Live Tokyo 2010(BLT2010)」(主催:一般社団法人IAI日本)にフォーラムエイト・チームのスペシャルアドバイザーとして参加。同年10月13日から15日にわたる48時間内で、インターネットや3D・CADなど先進のIT(Information Technology:情報技術)を活用しつつ、建築プロジェクトの課題に取り組んだ。

 同氏はそこでまた、いろいろなことを学ぶとともに、「こういうツールがあったら良いな」というアイディアを着想。前述のCityDesignツールと組み合わせることで、新たなツールの開発に繋げている。

Build Live Tokyo 2010のコンペ参加に当たって提供されたデータの問題点
Problems of the data provided in participating in the competition at the Build Live Tokyo 2010

 まず、大阪大学大学院の福田知弘准教授による今回プロジェクトでの研究とも関係しているとの前置きとともに、自身がレンダリングを担当したBLT2010のコンペに当たって提供されたデータの問題点について説明する。

 つまり、そこでは航空写真からフットプリント(footprint)を取得している。すると、建物のモデルを作成するのに多数の頂点(vertices)を発生するなど必要以上のデータ量を生成。加えて、単純な立方体の隅角部(corner)が正確な90度とはならず、同じ平面(plane)であるべき上面の座標が微妙に違ってくる事態も来し得る。その結果、そこから他のソフトウェアへ3Dデータを持っていった時にデータの欠落する箇所が出たり、計算時間が過剰に長くかかったりすることが想定された。実際、作業はかなり時間を要したほか、コンペ終了後に確認したところ、データそのものにもさまざまな問題が見られたという。

 それでも、BLT2010のコンペでは、最終的にスタッフの頑張りもあってレンダリングを無事に出力することは出来た。

 その一方で、前述のような問題をクリアし、レンダリングをより簡単かつ短時間に行えるアプローチを何とかできないかとの模索は続けられてきた。

 例えば、個々に前述のような問題のある建物を200戸ぐらいまとめて、もう少し現実的な建物のデータになるよう頂点や隅角部を修正しようとすると、大変な作業にならざるを得ない。したがってそのままでは、限られた予算や時間内でVR都市データなどを作成するには無理がある。そこで今回注目されたのが、屋根の形状表現に従来から自身の研究課題でもあった自由曲面のメッシュ(mesh)を利用する例だった。

 ただ、普通に自由曲面を既存の3Dソフトでデザインしようとすると、どうしても三角形分割(triangulation)は不均一、もしくは変わった形になる。かと言って、スムージング(smoothing)をかければ、さらに歪んだ三角形メッシュが出来てしまう。その意味で、そこにはまだ決め手となるソリューションがあるわけでなく、現在なおホットな分野の一つ、と同氏は位置づける。

シンギュラー・ポイントの生成例
Examples generating singular vertices (points)

(画像は小林佳弘氏 提供/(有)ライティング・ソリューションズ 訳)
(Images provided by Yoshihiro Kobayashi/Translated by WritingSolutions Ltd.)

 「一つの点(頂点)で6個のエッジ(edge:辺)を共有していることが理想的なのですが、サッカーボールのようにどんなにうまく三角形を貼っても、シンギュラー・ポイント(singular vertex(point):特異点)という不規則な点を発生することになっているのです」

 例えば、5個もしくは7個のエッジで分割されている頂点を1個削除しても、もともと6個のエッジで分割されていた頂点が新たに5個あるいは7個のエッジを生成。結局、別のシンギュラー・ポイントを発生させることは避けられない。

 これに対し、同氏らはそのシンギュラー・ポイントをリストアップして分類。インタラクティブに動かしたり、削除したりして編集し、建物などのデザインを一応それらしく見えるように作成できるツールおよび手法を開発した。


 今回はその適用事例として、自由曲面の屋根形状を作成。ほとんどの三角形メッシュは同じようなサイズおよび形状とし、シンギュラー・ポイントは背後に移動させた。その成果はそのままBLT2010のコンペの屋根部分のデザインに応用。デザインを決定するまでに48時間中24時間を要するなど、時間的な制約がある中で、きれいなレンダリングを実現できたと振り返る。

BLT 2010でのレンダリングを機に新たな発想も

Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment

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