続いて視点を変え、その前年(2009年)の夏にタージディス氏らが訪れたウィスコンシン州の、小道(small paths)が網の目のように交差する地域の地図を示す。各交差点ではその都度、進路をどちらに取るか迷いつつ、常に異なる経路を選択。それによりさまざまな経験を得られるよう意図した、と振り返る。
小道やそれらが交差するウィスコンシン州の地域 An Area in the State of Wisconsin Where Little Paths Intersect |
移動経路のトポロジー・ツリー A Topological Tree of Navigation Paths (画像はコスタス・タージディス氏 提供/(有)ライティング・ソリューションズ 訳) (Images provided by Kostas Terzidis/Translated by WritingSolutions Ltd.) |
その上で同氏は、交差点に行き着くごとに右か、左か、真ん中か、という進路の決定について抽象化、一般化する中で、トポロジー・ツリー(topological
tree)を作成。可能性のある経路選択の順列(permutation)・組み合わせ(combination)により、自身の決定を反映してさまざまな経験(に関する情報)が得られる流れを図化している。
これを応用することで、時間の経過と連動し、自身が通行した経路を辿ることが可能になる。また、それぞれの交差点で違う経路を選択した場合はどうなるか、など更なる可能性の探索にも繋がるとする。
同氏は前述のウィスコンシン州の地図を再度掲げ、街路ネットワークのさまざまな制御ポイント(control points)を表示。それから派生して作成されたトポロジー・ツリーを使い、ある日の時間と連動し、自ら決定する経路の多様な組み合わせの可能性について説明する。
いっそう興味深いこととして、タージディス氏はやはり先に触れたハーバード大学周辺の地図を例に、まず、さまざまな経路を取るナビゲーションを提示。そこに、数多くの接続ポイントを有する街路ネットワークの情報を載せ、それをトポロジー・ツリーで表現。これを基に複数の経路選択をシミュレーションする。
その際、異なる経路を選択すると、それに連動した地域で経験される視覚的な情報として当該経路を俯瞰する航空写真を表示。加えて、各地点に応じた音楽などの音響(sound)も設定。具体的に、ある経路を進む中で、交差点を経るごとに当該区間に特化した音響が次々と聞こえてくる仕組みを示す。
その上で、今度は自転車で公園内の道を走行している自身の視点から捉えた映像を紹介。やはりコースを進み、景色が変わるとともに、背後には各区間に応じた異なる音響が流れる。つまり、そこではその空間内で自身が選んだ記憶と連動した、自分自身の視覚と聴覚に訴える情報がセットで得られることになる。
Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment
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パーソナル・インフォマティクス(個人の情報学):
ライフパス(日々の活動における経路)
Personal Informatics: Life Paths
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経路選択と多様な経験の可能性
VRとiPhoneの連動、更なるパーソナル化
さらに、タージディス氏は中目黒地域にフォーカス。ここにもさまざまな経路の選択肢があるとする。そして、iPhoneを利用することで、通りを進みながら自身が感じる、より個人的な情報とともに経路を辿ることが出来ると解説。実際にiPhoneのディスプレイ上の地図に複数のポイントを表示し、自転車で移動して行くにつれ、異なる音響が背後に流れる様子を再現する。