Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment
能動的デザインツールとしての活用へ
「(前述の歩行者のエージェントなど)それまでのアプリケーションが非常に可視化に走っていて、そこから実際のデザインを派生させるような機能としてはあまり使われていませんでした」
そうした認識の下、2010年のWorld 16に当たっては従来と同様にJava 2Dを使い、まず平面上を点で表現された歩行者の複数エージェントがそれぞれ衝突を回避しながら、双方向から反対側へと移動していくアプリケーションを作成している。
それらのエージェントが間断なく視界を横切るうちに、点群は群集流(lane formation)と呼ばれるある種の縞模様を形成するようになる。そこではリーダーが指示して特別なフォーメーションが取られているわけではない。あくまでも、比較的簡単な構造の複数エージェントが極小近傍における衝突検出(collision detection)といった極小的に反応する機能しか持たない中で、大域的にはこうしたパターンが創発的(emergent)に生まれることを意味する。楢原太郎氏は今回、とくにこの部分に注目したと述べる。
同氏は最初に、人間の行動パターンのインタラクティブな変化をリアルタイムに可視化するツールを使い、複数のエージェントが動き続ける様子を示す。障害物が何もない状態ではそのうち、エージェントの動きの中から縦縞の群集流(定常状態)が形成され、それで安定していく。
そこに、今回プロジェクトの基本コンセプトである手描きパッドやマウスを使って壁やフェンス、樹木などの障害物を描き込むと、それを反映してエージェントの行動経路はリアルタイムに変化。それらは集団として、出来るだけ衝突の少ない安定した定常パターンを探そうとする。
その結果、例えば、初めに障害物を挟んでパラレルな2本の列が形成され、その後、次第に斜めの列が生まれてくる。つまり、一時的に定常な行動パターンは必ずしも安定しているわけではなく、いくつかの行動パターンが周期的(cyclic)にシンクロしながら移行を繰り返す流れ(周期的定常状態)を来す場合もあるという。
また、行動パターンを変化させる入力オプションは障害物ばかりでなく、噴水やランドマークになるオブジェクトなどのアトラクター(attractor)にも対応。これらに引き付けられる形でエージェントの流れに生じる新たな変化が表現されるよう設定。直感が裏切られるといった状況をツール上で解析することも意図されている。
可視化から能動的デザインツールへ: リアルタイムに障壁やアトラクターを描き込める流れのシミュレーション From Visualization to Generative Applications: a simulation capable of drawing barriers and attractors in real time (画像は楢原 太郎氏 提供/(有)ライティング・ソリューションズ 訳) (Images provided by Taro Narahara/Translated by WritingSolutions Ltd.) |
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インタラクティブ・デバイス開発
(可視化から能動的デザインツールへの活用)
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