楢原太郎氏がWorld 8(2009年から「World 16」へ拡大)の共同研究に参加したのは、MITを経、さらに奨学金を得てハーバード大学大学院デザインスクール博士課程に進んだばかりの頃。そこでは後に発表するコスタス・タージディス(Kostas Terzidis)准教授の下、デザインとコンピュータ工学的な世界を結ぶ分野(design & computation)の研究に取り組んできた。
2010年、同課程を修了。その後、同氏はニュージャージー工科大学建築デザイン学部のアシスタントプロフェッサーに就任。デジタルデザイン(digital design)の授業を担当している。
World 8の共同研究における最初(2008年)の活動として、同氏はUC-win/Roadで構築したVR(Virtual Reality)環境に人間の動きをどのようにして取り込むかを検討した。その上で、実際の人間の動作からモーションキャプチャファイル(motion
capture files)を取得。複数アプリケーションを介す中でそれらのデータを使い作成したモデルをMD3ファイル形式にし、UC-win/Roadにインポートするプロセスを確立。最終的には、これに基づき、UC-win/Roadで直接読み込めるpk3ファイルを作成するプラグイン(plug-in)の開発に繋げている。
07−09年VRシンポジウムにおける人間行動モデル可視化の軌跡 Tracks of visualization of human behavior in the International VR Symposia from ‘07 through ‘09 (画像は楢原 太郎 氏 提供/(有)ライティング・ソリューションズ 訳) (Images provided by Taro Narahara/Translated by WritingSolutions Ltd.)) |
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ニュージャージー工科大学建築デザイン学部 アシスタントプロフェッサー 楢原 太郎 氏 Taro Narahara, Assistant Professor, College of Architecture and Design, New Jersey Institute of Technology (写真は潟tォーラムエイト 提供) (Photo provided by FORUM8) |
ニュージャージー工科大学(New Jersey Institute of Technology:NJIT)建築デザイン学部アシスタントプロフェッサーの楢原太郎氏が人間行動モデルの可視化(visualization of human behavior)に興味を持ち、初めて自らの研究テーマとしたのはマサチューセッツ工科大学(MIT)修士課程在学当時に遡る。
大学(早稲田大学)では数学を専攻。その後、ワシントン大学建築学修士課程を経て、いずれもニューヨークに拠点を置く設計会社、グラックマン・メイナー・アーキテクツ(Gluckman Mayner Architects)、次いでスキッドモア・オーウィングズ・アンド・メリル(Skidmore, Owings and Merrill LLP:SOM)に勤務。さまざまなプロジェクトへの参加を通じ、建築家として国際的な設計実務の経験を蓄積してきた。
そうしたプロセスを経て、奨学金を得たのを機に前述のMITで研究活動を再開。その頃、人間行動モデルの分野では避難行動シミュレーションなどへの取り組みが一般的だった中、同氏は定量的な判定を超え、定性的な評価に着目。人間が壁に対してどのような反応をするか、あるいは人間がどのような社会的な相互作用(interaction)を空間の中で行うか、といった空間への知覚的反応を探るアプローチから研究を進めたと振り返る。
具体的には、3D Studio Max(3ds Max)を使い人間行動のパターンを可視化。空間内の配置を変化させ、それを反映して行動パターンが変わったりする様子を3次元(3D)上で視覚化することにより設計に役立つのではと着想した。
そこで、実際にミース・ファン・デル・ローエ(Mies van der Rohe)をはじめ複数の建築家がデザインした空間を3Dで再現。そこにエージェント(agent:仮想フィギュア)を入れ、その行動パターンを可視化。これを活用することで、人への影響を見ながらデザイナーが自身の設計を検討可能なツール化を図っている。
Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment
インタラクティブ・デバイス開発
(可視化から能動的デザインツールへの活用)
From Visualization to Generative Applications
Continued
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