カリフォルニア大学サンタバーバラ校メディア・アート技術研究大学院プログラム教授
マーコス・ノヴァック 氏
Marcos Novak,
Professor, Media Arts & Technology Graduate Program, University of California, Santa Barbara

（写真は㈱フォーラムエイト提供）
(Photo provided by FORUM8)

　2010年度「World 16」プロジェクトでの研究に至るアプローチとして、カリフォルニア大学サンタバーバラ校（University of California, Santa Barbara：UCSB）メディア・アート技術（Media Arts & Technology：MAT）研究大学院プログラム教授のマーコス・ノヴァック氏は、関連するさまざまなプログラムや機関を通じた自身の取り組みに触れる。

　まず、トランス・ラボ（transLAB）は、UCSBに設置された研究施設。芸術および科学における実際の空間、トランス活性化された（transactivated）空間、さらにバーチャルな空間の関係を技術によっていかにつくり変えるかを探る、とのミッションを掲げる。ノヴァック氏が、その施設長（director）も務める。

　また、MATはUCSBの工学部および文理学部が共同運営する学際的な大学院プログラム。視覚と空間を利用したアート、電子的な音楽や音響のデザイン、マルチメディア工学を中心としたデジタルメディアに関する教育、研究、制作にフォーカス。芸術的かつ工学的観点から最新技術を駆使した芸術およびメディア表現における可能性を追求している。

　さらに、これらと密接に関係している研究施設がアロ・スフィア（AlloSphere）。UCSBではデジタルメディアの研究者チームが、新しいメディアの利用により科学と工学を融合する学際的な分野の育成に力を入れてきた。AlloSphereは直径約10mの巨大な球体を成し、没入型の3Dバーチャル環境で大規模なデータの多様な表現を提供。共同研究を通してアイディアの創造と具体化を促進するようにデザインされている。

　一方、カリフォルニア大学ロサンゼルス校（UCLA）とUCSBは共同で、カリフォルニア・ナノシステムズ研究所（California NanoSystems Institute：CNSI）を設置。ナノシステムに関する学際的な研究および教育を促進する、共同研究や統合的かつ対話型の環境を創出している。

　こうした活動の中で、同氏らは前衛芸術の制作から科学の先端研究までカバー。その対象は建築、電子音楽、メディア・アート、コンピュータサイエンス、コンピュータ工学はもちろん、理論物理学、分子生物学、新素材などナノテクノロジーや建設に関わる広範な領域にも及ぶという。

　前述の幅広い研究に加え、ノヴァック氏は自身が育ったギリシャの古代と、古代および現代の日本との間で審美眼（sense of beauty）に関連性が見られることに着目。今回（World 16研究成果発表で）の来日を機に、その探索も試みたいと述べる。

　その一つとして自ら「巡礼（pilgrimage）」と称する、伊勢神宮、とくにその内宮および外宮への参拝を位置づける。

　例えば、同氏が指し示すスクリーン上の、一見何もないような領域（field）に一つ、二つ、三つとアルファベットが浮かび上がり、ついにはある種の意味が読み取れるようになる。これは、当初空虚であるかのように思われたものが実は無でなく、注視するうちに本来そこにある重要な意味が理解できるようになることを比喩するもの。

　つまり、道に敷き詰められた石や参道脇の古木、金色に反射する屋根などに秘められたパワーが約2千年の歴史を経てなお文化に重要な意味を持つ。そのようなことが伊勢神宮をはじめ日本中の神社で起こっていると説く。

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