プレゼンテーションの冒頭、スウォーツ氏は建築について考える際、建物自体ではなく、空間を扱うという観点を示す。
その上で、3D空間の点や2D空間の面など異なる次元の幾何学的形状(geometry)に着目する。異なるタイプの空間には複数タイプのオブジェクトがあり、それらの空間では幾何学的形状のみならず、重さなど物質的な性質(materiality)も考慮される。さらに、空間内を移動する時間の経過とともに生じる変化も考えられる。その際、物質的な性質や時間といった要素が空間のみを解析するのと比べ、多少の困難を増すことは否めない。それゆえ、ビジュアル解析(visual analysis)のほとんどが幾何学的形状の面にフォーカスする形になっている、と説明する。
次いで同氏は、1930年代から50年代にかけて多く試みられた人間と類似した脳を持つネズミ(rat)を使った実験や研究へと話を展開。そうした成果の一つとして、エドワード・トールマン(Edward Tolman)が「Cognitive Maps in Rats and Men(ネズミと人間における認知地図)」(1948年)の中で言及した、人とネズミの空間に関する知力の類似性と認知地図(Cognitive Maps)の発想に注目する。そこでは、私たちが空間と向かい合う時、心の中にはベクトルの集合が構成される。一方、私たちの脳内には電気パルスを通じ3Dのベクトルを蓄積する生物学的構造があるとする。
つまり、私たちの心の中には世界地図があり、3D情報が脳内の海馬に蓄積される。それに対応する空間解析手法の一つが、ある種の数学的計算を伴う非言説的なテクニック(non-discursive technique)で、さまざまなタイプのオブジェクトがいかに関係し合うかを分析するもの。同氏は、互いに隣り合う2つのオブジェクトがさまざまなノード図(node diagram)を生成する例、複数のブロック(blocks:街区)がそれぞれ最少かつ異なる連結の仕方で配置される例、および複数のブロックが多様な連結の仕方や形状を取る例を列挙。さらに各種の情報、あるいはさまざまな空間がどのように相互に連結しているかを可視化する技術を使った、ビジュアル解析や空間解析へのアプローチにも触れる。
ジョージア工科大学 建築学部 研究員 マテゥー・スウォーツ 氏 Matthew Swarts, Research Scientist, College of Architecture, Georgia Institute of Technology (写真は潟tォーラムエイト 提供) (Photo provided by FORUM8) |
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ジョージア工科大学(Georgia Institute of Technology)建築学部研究員のマテゥー・スウォーツ氏は2010年度の「World 16」プロジェクトにおいて、3DリアルタイムVR(Virtual Reality)ソフトUC-win/Roadで空間解析(spatial analysis)を行うプラグイン(plug-in)の研究に取り組んだ。
具体的には、UC-win/Roadのアプリケーションやオプションを作成できるUC-win/Road SDK(開発キット)を使い、Delphi 2007 でプラグインを開発。そのプラグインを通じ、UC-win/Roadの空間解析性能を増大させ、併せてその解析結果を可視化しようとの目標が位置づけられた。
同大のイマジン・ラボ(IMAGINE Lab)では、大学キャンパスのハイファイかつリアルタイムな3D環境を構築。これらのモデルはキャンパスの可視化とともに、空間解析の研究にも利用されているという。
Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment
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ビジュアル空間解析(UC-win/Roadで
点群の可視化を通じて実現されるIsovist解析)
Isovist Analysis Realized through Point Cloud Visualization
in UC-win/Road