デザインの仕方についていかに学ぶか。あるいは、バーチャル環境の中にデザインをどう生成するか。また、その中でどうコミュニケートし、コラボレートするか ― 。
シナーベル氏は、今回プロジェクトで取り組んだバーチャル環境に関する自らの研究の視点をこう解説する。
その上で、建築デザイナーは発想を巡らすとともに、自分たちのデザインや考え方を可視化するなどさまざまな方法で表現。それらをコミュニケートしていく際には、コンピュータグラフィックス(CG)や物理的な模型、テキストなどの表現手段が大きな役割を果たすことになる、と位置づける。
次いで同氏は、物理的な模型や視覚表示(graphics)、デジタルモデルのサンプルを提示。さらにそうした過程における建築家やエンジニアの作業環境の一端として、1950年代に描かれたCADツールのビジョンと、近年の具体的なデザイン環境例を比較。とくにコンピュータを利用する際の基本的な考え方やシステムの構成についてはほぼ変わっていないと説く。
その反面、デザインとツールがどう関係しているか、それぞれの違いをどうコミュニケートできるか、といった問題は残ると指摘。それらを踏まえ同氏は、3Dはもちろん、テクスチャの変換や組み合わせなどにより多次元レベルでデザインの意図を再現、デザインプロセスを通じ相互に連携する手法として、バーチャル環境の可能性に着目するに至ったと振り返る。
デザインスタジオの具体化
香港中文大学建築学院 准教授 マーク・オーレル・シナーベル 氏 Marc Aurel Schnabel, Associate Professor, School of Architecture, the Chinese University of Hong Kong (写真は潟tォーラムエイト 提供) (Photo provided by FORUM8) |
建築家はリアルやバーチャル、さらにはAR(Augmented Reality:拡張現実)など多様な表現手段(media)のインターフェースを利用し、創造的な技術や新たな可能性の探求を続けている。
一方、デザイン作業に際しては、基本的に学際的な複数の専門家が共同して当たる。つまり、このような活動においては、効果的なデザインプロセスやコミュニケーション手法の実現が不可欠な要素となる。
そうしたアプローチの中で、建築に関する教育分野では近年、さまざまな形態のバーチャル・デザインスタジオ(Virtual Design Studio:VDS)が取り組まれてきた。これは、建築デザインの授業で広く用いられ、試行されている手法の一つ。その構成、あるいはそこに課される役割は、単にテキストベースのものから、インタラクティブ、あるいは同期・非同期のコラボレーションに至るまで多岐に及ぶ。
香港中文大学建築学院准教授のマーク・オーレル・シナーベル氏は自身の建築デザイン研究を通じ、お互いに離れた拠点から参加するパートナー同士が共同でデザインやコミュニケーションを行うツールとして、バーチャル環境(Virtual Environment:VE)の活用に注目してきた。
そこで同氏は、2010年度の「World 16」プロジェクトに向け、「没入型バーチャル環境のデザインスタジオ(Immersive Virtual Environment Design Studio)」の枠組みにおけるデザインと認知、理解、コミュニケーション、コラボレーションの関連について考察することをその研究課題に掲げている。
Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment
触れられないものに触る:
没入型バーチャル・デザインスタジオ
Touching the Untouchable:
Immersive Virtual Design Studio
Continued
1
Next >