模型を作成した上で、その模型からVRモデル用のデジタルデータをつくる ― 。

 今回プロジェクトで自ら掲げた課題へのアプローチとして、建築や土木、遺跡などの分野での既往研究、あるいは3D写真測量を用いる方法などさまざまな技術を検討。それぞれの長所や短所を考慮し、現段階では非常に高精度な3Dデータを得られるという観点から、福田知弘氏らは3Dレーザースキャナー(3DLS)に着目した。

 ただ、3Dレーザースキャナーを使った場合、扱うデータ量が膨大になる問題は避けがたい。その反面、VRで使おうとすると、10fps(frame per second)以上のリアルタイム・レンダリングが求められる。そのため、スキャンして得たデータから、頂点(vertexes)やポリゴンなどのデータ量を適宜減らす必要があった。

VRモデリングの全体の流れ(左)と、Poly-Optの全体の流れ(右)
The entire VR modeling flow (left) and the entire Poly-Opt flow (right)

(画像は福田 知弘 氏 提供/(有)ライティング・ソリューションズ 訳)
(Images provided by Tomohiro Fukuda/Translated by WritingSolutions Ltd.)

 「そのような(データ量の削減とエッジの形状をともに考慮する)、建築・土木の分野で使えるシステムがなかったことから、今回の研究で(3Dレーザースキャナーを用いてスケールモデルから最適なVRデータを生成するモデル化の流れを)開発しようと試みました」

 同氏らはまず、都市模型を用意し、3Dレーザースキャナー(今回研究では非接触3Dデジタイザ「VIVID 910」を採用)を設置している。

 その際、当該模型の3Dデータを一度にすべては取得できないため、模型の周りを360度回転しながらスキャン。その後、同レーザースキャナーに付属するポリゴン編集ソフト(Polygon Editing Tool)を使い複数のスキャンデータを統合。点群はVRデータ作成に向け面形式に変換され、VRML97ファイルとしてアウトプットされる ― という、一般的なVRモデリングの流れを説明する。
        



     (次ページへ続く

大阪大学大学院 工学研究科 環境・エネルギー工学専攻 環境設計情報学領域 准教授
福田 知弘

Tomohiro Fukuda,
Associate Professor of Environmental Design & Information Technology, Div. of Sustainable Energy & Environmental Engineering, Graduate School of Engineering, Osaka University


(写真は潟tォーラムエイト 提供)
(Photo provided by FORUM8)

 「建築デザインや都市計画、土木設計もそうですが、とくに最近、参加型の計画(あるいはプロジェクト)が増えてきています」

 つまり、そこに集まる関係者も多様化していることから、誰もが直感的で分かりやすいコミュニケーション・ツールが求められることになる。このようなニーズを反映し、CGやVR(Virtual Reality)の利用がかなり広がってきた一方で、従来からの物理的な模型(スケールモデル)ならではのメリットもあり、現在はそれらが相互補完的にハイブリッドで使われるケースも多く見られる。

 大阪大学大学院工学研究科環境・エネルギー工学専攻環境設計情報学領域准教授の福田知弘氏はそうした流れを踏まえ、それらツール利用の新たな展開の可能性に注目。前回(2009年)「World 16」プロジェクトでは模型をVRのためのタンジブル・ユーザー・インターフェース(Tangible User Interface:TUI)として用いることを試みている。

 ただ、それらツールの作成プロセスはというと、それぞれが別々になされることが多く、連携することはさほどないのが通常。例えば、最近でこそ3D CADなどで作成したデータを基に立体的なモデルを造形する3Dプリンターの利用も見られるとは言え、模型製作はなお手作業によるのが主流。他方、CGやVRの作成はコンピュータでの入力作業が中心となる。したがって、たとえ各ツールの機能を有効活用するにしても、これらを従来のように別々のプロセスで行っていては工数が掛かり、コストも要してしまう。

 それではそのプロセスを効率化し「これらを同時に(連携して作成)出来ないか」との発想が、今回プロジェクトにおける同氏らの試みに繋がったと振り返る。

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(掲載 4/28/2011)