国交省官庁営繕部が「BIMガイドライン」(2014年3月)策定 ― フォーラムエイト「Allplan2014」による同ガイドライン「第2編 設計業務編」への対応


By 池野隆(Takashi IKENO)
(掲載 7/9/2014)


 国土交通省官庁営繕部は2014年3月、「BIMガイドライン(官庁営繕事業におけるBIMモデルの作成及び利用に関するガイドライン)」を策定。今年度(2014年度)から官庁営繕事業(設計業務および工事)に適用することとした。

 そこでは、設計業務あるいは工事の発注においてBIM(Building Information Modeling)導入を義務付けるものではないとしつつも、受注者自らの判断によりBIMを利用する場合や、技術提案に基づく技術的検討を行うにあたってBIMを利用する場合などを、同ガイドラインの具体的な適用シーンとして描く。

 コンピュータ上に作成した3次元(3D)の形状情報に加え、室等の名称や面積、部材・材料の仕様や性能、仕上げ ― など、建築物の属性情報を併せ持つ建物情報モデルを構築しようという「BIM」。近年、その手法は国内外で建築分野はもとより、土木分野にも導入が広がる流れにある。

 そのような背景の下、BIMガイドラインでは官庁営繕事業において設計業務あるいは工事の受注者がBIMを導入できること、加えて、その際のBIMモデルの作成や利用にあたっての基本的な考え方、留意事項などが改めて示された。それにより、官庁営繕事業を円滑かつ効率的に実施し、その品質を確保しようとの狙いが込められている。


BIMガイドラインの概要とポイント

 BIMガイドラインは、「第1編 総則」「第2編 設計業務編」「第3編 工事編」の3編から成る。

 そのうち設計業務と工事の双方に共通する「総則」では、同ガイドラインの目的やその適用の仕方について整理。併せて、そこでカギとなる用語の定義、BIMソフトウェアやBIMモデルの作成において求められる要件・留意事項などの共通事項について説明している。

 次いで、「BIMガイドライン(設計業務編)」はまず、設計業務におけるその適用の考え方や実施方法を概説。その上で、図面等の作成、属性情報の記載、成果物の電子納品、基本設計段階および実施設計段階におけるBIMモデルの詳細度などのあり方について解説。さらに、設計内容の説明等に用いる資料等の作成、干渉チェック、シミュレーションなどBIMモデルを利用する技術的な検討の手法についても、具体例を交えて言及している。

 残る「BIMガイドライン(工事編)」では、工事におけるその適用の考え方を述べた後、完成図等の作成のためのBIMモデルの詳細度、完成図の電子納品、完成図等の作成のためのBIMモデルの利用と取扱いについて解説。技術的な検討の例として干渉チェックを行う際の要件にも触れる。

 とくに、同ガイドラインを通じてBIMの利用目的を明確化するとともに、技術的な検討の具体例(各種シミュレーション、内外観や納まりの可視化、干渉チェックなど)、BIMモデル作成の代表例(柱、梁、ダクトなど)や詳細度の目安も提示。これらを運用・活用することで、求めるBIMの効果が的確に発現し、BIMを導入する受注者にとってBIMモデル作成の効率性が高まるはず、とする。

 同省では、同ガイドラインを適用したBIM利用の事例を蓄積しつつ、他の公共発注機関などへの周知にも注力。これらの取り組みを、以後も着実に継続していく予定という。


BIMガイドラインへの期待と課題

 「BIM、および土木業界におけるCIM(Construction Information Modeling (/ Management))に関して、ユーザーの関心は高いと感じています」

 BIMはもとより、その手法をベースとして社会資本整備など広く建設分野に応用しようというCIMへの注目が近年増している。一方、そうしたニーズに対応するソフトウェアの導入を依然模索しているユーザーは多い、と潟tォーラムエイト福岡営業所の茶屋美保子・インストラクターリーダは語る。

 その意味では今回、BIMガイドラインによりBIMの利用目的が明確化。しかも、技術的な検討の具体例や利用目的に応じて必要なBIMモデルの詳細度の目安が示されたことなどから、ユーザーのBIM導入が進む契機になるのでは、との期待を示す。

 とはいえ、成果物の引き渡しや工事の契約等にあたって使用する設計図書は2次元(2D)の図面等によるものとされるなど、従来の手法と変わらない側面も窺われる。したがって、そこでのBIMモデルの使用に関する制約などの問題をどう解消していくかが今後の課題、と説く。

 次ページへ続く

Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment

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