「CIM ― 注目される、その展開と可能性」連載特集(2)
「第2回 データモデルセミナー」(土木学会・道路業務プロセスモデル検討小委主催)リポート
道路事業向けプロダクトモデルおよび業務プロセスモデルの構築へ ― 道路データモデルの提案アプローチ(1)
小委員会活動の概要
海外での利用も視野、データモデルの有効性にフォーカス
「第2回 データモデルセミナー」は、道路業務プロセスモデル検討小委員会副小委員長の青山憲明氏(国土交通省国土技術政策総合研究所(国総研)高度情報化研究センター情報基盤研究室主任研究官)による「道路業務プロセスモデル検討小委員会 活動報告」と題する講演でスタートした。
道路のライフサイクルを通じた情報の有効活用へ
(公社)土木学会 土木情報学委員会 道路業務プロセスモデル検討小委員会 副小委員長 青山 憲明 氏(国土交通省 国土技術政策総合研究所 高度情報化研究センター 情報基盤研究室 主任研究官) |
日本は、戦後の高度経済成長を支えたインフラ整備、またその後の大量のストックに対する維持管理などを経験。そうした中で、インフラ建設の計画から設計、施工、維持管理に至るプロセスを通じ利用可能な各種の高い技術力が蓄積されてきた。
その半面、個別の施設で捉えると、そのような土木構造物のライフサイクルにわたって生じるさまざまな情報が必ずしも一貫して流れていない(あるいは、有効に活用されていない)といった指摘が以前からあった、と青山氏は切り出す。
確かにその間には、建設省(当時)が1995年、「CALS/EC(Continuous Acquisition and Life-cycle Support / Electronic Commerce:公共事業支援統合情報システム、当時は『建設CALS/EC』)」の調査・研究を本格的にスタート。国土交通省直轄事業を中心に、それまで紙ベースでやり取りされてきた公共事業のライフサイクルにわたって発生する各種情報を電子化し、フェーズを越えた情報の有効活用に繋げるべく取り組み(電子納品)が段階的に具体化、その対象を拡大してきている。
このCALS/ECでは2次元(2D)CAD図面をベースとする国際規格に則ったCADデータ交換標準「SXF(Scadec data eXchange Format)」を採用。電子納品の統一化という意味では、一定の成果はあった。ただ、納品後の情報の利活用については、例えば、必要な情報が下流のフェーズにうまく流れず、当初期待されたような成果にはなかなか繋がっていない現状も窺われる。
そこで同氏らはとくに道路インフラにフォーカスし、そのような課題を来してきた背景として、各道路管理主体において道路という共通の「業務プロセスモデル」が構築されていないことに着目。まずは「道路データモデル」を提案していく上で必要となる「データモデル」の使用メリットやその将来像、使い方、活用例などについて議論することを目的に「道路業務プロセスモデル検討小委員会」を2012年6月、土木学会土木情報学委員会内に組織。同年9月から2年間にわたる活動を開始している。
その1年目の活動の中間報告という位置づけで、「第2回 データモデルセミナー」は開催された。
初年度の活動と成果
同小委には、19名の委員が参加。各委員は、データモデルの定義を検討する「WG1」、データモデルの将来像を検討する「WG2」、3次元(3D)ソフトの調査・整理を行う「WG3」、データモデルの活用例を収集・整理する「WG4」、データモデル利用場面のデモを作成する「WG5」
― の5WGから成る分科会を通じ、活動を展開している。
青山氏は同小委の活動ターゲットについて、1)既存の「道路データモデル」の整理・検討、2)(道路データモデルや道路プロダクトモデル、業務プロセスモデルなど関係する)要素情報の整理、3)個々の情報のリンク方法の検討、4)国内の道路維持管理における「プロダクトモデル」と「業務プロセスモデル」の提案、および「データモデル」の普及・活用方法・デモ・将来像など、5)簡略化したモデル(2D)と詳細(3D)モデルの両面からのアプローチにより、「(道路)プロダクトモデル」と海外の道路向け「業務プロセスモデル」の提案 ― という5項目に言及。それらのうち、「4」に関する活動の成果を今回セミナーで紹介。また、「5」についてはまだ検討途中としながら、わが国のみならず海外でも通用するような道路の「プロダクトモデル」および「業務プロセスモデル」の提案を目指す考えを説く。
同小委では外部識者からの情報提供を交えつつ、要素技術について定期的に議論。それと並行し、分科会活動ではそれぞれの課題に即して整理・検討を重ねている。
そうした中から、初年度は「既存の『道路データモデル』の整理・検討」「海外の道路情報の収集」「『データモデル』を利用したデータ交換の検討」を実施してきた、と青山氏は振り返るとともに、後の講演で詳述する各WGの活動の概要にも触れた。
Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment
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