グリーンITSから路車連携による次世代ITSへ
ITS技術に関する直近の国総研プロジェクト研究



「グリーンITSの研究開発」の成果

 「ITSスポットを使った交通の円滑化ということに関しては、(高速道路)サグ部での車線利用の適正化に対する研究も一つの成果だと思います」

 高速道路上のサグ部(道路勾配が上り方向に次第に変化する区間)は今日、高速道路の渋滞の大きな発生要因とされる。そこで、国総研ではITSスポットを利用したインフラ側からの情報提供をベースに、車線利用の適正化、ACC(Adaptive Cruise Control:車速や車間を一定に維持する技術)などとも連携した車間の適正化、あるいは渋滞を抜けた後の緩慢な加速の防止 ― などの観点から、高速道路サグ部などの交通円滑化について検討してきた。

 車線利用適正化の研究は、そうしたアプローチの一つだ。これに関しては、「走行車線に移ってください」あるいは「車線をキープしてください」といった情報を公道上で適宜適切に提供するサービスの運用が開始手前まできている、と金澤氏は説明する。

 エコカーの利便性向上という面からは、EV向け給電スポットの位置情報をカーナビのルート案内に反映して提供できないか、と着想。情報基盤研究室(国総研高度情報化研究センター)を中心に、情報流通のためのデータ仕様作成、それに基づく情報の収集・提供システムの構築、それらの実証実験など、給電スポットの位置情報を活用した事業を展開していく上で必要となる環境の整備が進められてきた。

 また、大型車による環境負荷を低減するための検討では、高速道路上での交通事故からもたらされる渋滞などの環境負荷を視野に、大型車のカーブ区間における速度超過に起因する事故の削減にフォーカスした。

 具体的には、ITSスポットを活用し、カーブへの侵入に先駆けて注意喚起のための情報をドライバーに提供するシステムを開発。大型車による事故が過去に発生した首都高速の熊野町カーブにおいて、実際にその効果を計測・検証している。

現行プロ研への流れとそのポイント

 先の「グリーンITSの研究開発」を受け2013年度にスタートしたのが、現在進行中のプロジェクト研究「道路インフラと自動車技術との連携による次世代ITSの開発」(プロジェクトリーダー:ITS研究室長)だ。

 「交通円滑化や安全運転支援のための新技術は、やはり引き続き開発していく必要がある」との考えの下、「今度は道路インフラと車両技術との連携によって高速道路サグ部の渋滞削減や安全運転支援(にフォーカスした技術開発)に取り組む必要がある」。金澤氏はITS関連の新しいプロジェクト研究に込められた意図を解説する。

 道路インフラのストック活用が重視される流れにある。一方、2020年までにITS等を用いて全国の主要道における交通渋滞を2010年比で半減させ、安全運転支援システムの導入・普及により2018年までに交通事故死者数を2,500人以下にする、との政府目標(2010年にIT戦略本部が決定した「新たな情報通信技術戦略 工程表」)が定められている。また、欧米でも2015年頃に見込まれる協調ITSサービスの実展開に向け、開発や標準化などの活動が活発化してきているという。

 こうした背景に加え、都市間高速道路における渋滞の6割はサグ部で発生しているとされることもあり、今回プロジェクト研究に当たっても前回と同様、とくにこのサグ部に注目。さらに、高度化する安全運転支援システムなどの自動車技術と道路インフラ技術が連携することで道路交通の課題を解決できないかと考えられた。

 そこで新プロジェクト研究では、「円滑で安全な交通の実現に向けた官民連携技術開発」を副題に設定。道路インフラ側のセンサーや機器のみならず、自動車技術とも連携する協調ITSを実現すべく、民間企業などとも協力しながら必要となる技術の開発や仕様の整備を行うこととした。

Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment

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