ITSを核に進化する交通社会
ビッグデータ活用や自動運転実用化に向けた展開も


 そこでは、@ナビゲーションシステムの高度化A自動料金収受システムB安全運転の支援C交通管理の最適化D道路管理の効率化E公共交通の支援F商用車の効率化G歩行者等の支援H緊急車両の運行支援 ― という9つの開発分野ごとに、ITS利用者サービス(計20項目)を設定。併せて、開発から実用化、普及へと進むロードマップ(行程表)も作成している。

 その後、第11回ITS世界会議愛知・名古屋2004に先駆け、産学官の関係者が参加して日本ITS推進会議が2004年9月に設置された。同推進会議では前述の全体構想を起点とするITS推進のファーストステージにおける成果を継承。同年10月、セカンドステージに向け「安全・安心」「環境・効率」「快適・利便」を柱とし、@道路交通の安全性向上A交通の円滑化・環境負荷の軽減B個人の利便性向上C地域の活性化D共通基盤の整備と国際標準化・国際基準の策定等の推進 ― といった5つの重点項目から成る「ITS推進の指針」をまとめている。

 わが国のITS推進に関わるこうした取り組みを背景に、ITS Japanは2008年、「ITSビジョン2030」を策定した。これは2030年をターゲットとし、予想される社会的変化を視野にわが国の「交通社会のありたい姿」を想定したもの。また、そのビジョンを実現するため、2015年までに取り組むべきテーマが「ITS総合戦略2015」としてまとめられた。同総合戦略では、@次世代協調型システムA次世代モビリティネットワークシステムB災害時/平常時ハイブリッド情報システムC国際展開戦略企画 ― といった重点テーマを選定。現在もその具体化に向けた取り組みが進められている。

ITS関連政府プロジェクトとITS Japanの関わり

 関係省庁に対して中立、かつ民間を代表するスタンスに立ち、ITS Japanはわが国のITS推進に関わるさまざまな活動に参画。そうした中から、政策への提言、官民の連携や調整、国際戦略などの面でユニークな役割を果たす。

 一方、「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)」の施行に基づき、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部:現・IT総合戦略本部)が2001年、内閣に設置されている。以降、わが国では同戦略本部の下、警察庁や総務省、経済産業省、国土交通省の4省庁がITS JapanやITS標準化委員会と連携してITSの推進に取り組む体制が形成されてきた。

 同戦略本部は2006年に「IT新改革戦略」を策定。その中で、IT(情報技術)の構造改革力を追求し重点的に取り組むIT政策のターゲットの一つとして、「世界一安全な道路交通社会」の実現を位置づけた。同戦略を踏まえ、官民統一した方針に基づく安全運転支援システムなどの具体化に向けて、関係省庁や産業界の代表から成るITS推進協議会も設置されている。

 ITS Japanはまた、内閣府の総合科学技術会議が2007年に設定した「社会還元加速プロジェクト」(6つの個別プロジェクトより構成)の中でITSにフォーカスするタスクフォースに参画。さらに、IT戦略本部に設置(2010年)されたITSに関するタスクフォースの構成員としてなど、複数の政府プロジェクトや連絡会を通じ産学と官を繋ぐカギとなる機能を担ってきている。

中期計画に見るITS Japanの取り組み

 前述のようにITS Japanは2005年、NPO法人としてスタート。その後、「ITS推進の指針」(2004年策定)を反映した最初の中期計画(2006年〜2010年)に基づいて活動を展開。官民が連携するさまざまなプロジェクトなどに取り組むとともに、インフラ協調による安全運転支援システムをはじめITS実用化に資するべく活動に携わってきた。

 その間の、ICTの高度化や普及、地球温暖化対策との関わり、国際情勢などITSをめぐる環境やニーズの変化を受け、ITS Japanは新たに現行の中期計画(2011年〜2015年)を策定している。

 新中期計画は、「ITSビジョン2030」で示された社会を実現するための基本方向として、@移動通信ネットワークの高速化と日常生活への普及がもたらす潜在力を活かした交通社会システムの進化A自動車の動力源の転換とエネルギー需給構造の変化を支え、モビリティの持続的向上と省エネルギーを両立する交通システムの実現B経済活動のいっそうのグローバル化と、担い手となる国・地域の構図の変化を先取りしたITS分野の国際連携のリードC誰もが多様なライフスタイルでいきいきと暮らす豊かな社会を支える自立的・効率的モビリティの実現 ― の4つの柱を掲げる。

 その上で、ITS Japanが取り組むべき活動について、A)エネルギー供給の革新に対応した交通システム、B)次世代協調型運転支援システム、C)情報共有型社会の交通システム、D)地域と連携したITS展開促進 ― の4領域を設定。さらに、それらの取り組みを支える体制面から、X)国際連携と海外展開支援、Y)産官学連携促進と事業基盤の拡充 ― という2領域が位置づけられた。

 それらの一端として、例えば「A)エネルギー供給の革新に対応した交通システム」では、車両の電動化、エネルギー需給構造の変化、ICTの進展を背景に、@新しいモビリティを得ることで高齢者をはじめ誰もが自由に楽しく移動・活動できるAEV(Electric Vehicle)などの蓄電電力を家や社会と接続し、自動車(すなわちEV)が停まっている状態でも電気の供給源として活躍するB多様な交通手段が出来てくる中で、状況や目的に応じて快適・最適な組み合わせのモビリティを選べるC隊列走行やEVの導入により輸送の効率化・クリーン化を向上させる ― といった新しい交通システムのイメージが描かれている。

Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment

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