マンガの特性と従来型作画法の課題

 マンガの発想あるいはマンガによるコミュニケーションは、印刷媒体を通じてのみならず、その有するインターフェース機能により、物事を極めて明示的に表現し、さまざまな意味を伝えることが出来る、とシナーベル氏はマンガのメディア特性を位置づける。

 一方、マンガの制作面に関しては、その非常に明瞭な線画(line drawing)のほか、スクリーニング(screening:網点の集合により濃淡などを表現すること)やハッチング(hatching:複数の細い平行線により陰影や質感を表現すること)、パターン(pattern:模様)などから成る表現手法(drawing style)によって特徴づけられるとする。

 その上で、同氏はまず、線画で描かれた風景に多彩なスクリーンを貼り付けることで、より豊かな質感を持って表現できる仕組みを例示。スクリーンにはトーン(tone:濃淡)、カラー(color:色彩)、シェーディング(shading:陰影)、テクスチャ(texture:質感)という4つの要素があると解説する。

 ただ、とくに都市や自然空間など背景となる絵を表現する際、従来型の手描きによるマンガの手法では、マンガ家(Manga artist)が写真を撮影し、それを基に輪郭線を描き、そこにハッチングやスクリーニングを施す形で進められてきた。その結果、労働集約型の、非常に時間を要する工程になりがちだったと振り返る。

香港中文大学 建築学院 准教授
マーク・オーレル・シナーベル

Marc Aurel Schnabel,
Associate Professor, School of Architecture, the Chinese University of Hong Kong


(写真は㈱フォーラムエイト 提供)
(Photo provided by FORUM8)

 香港中文大学(the Chinese University of Hong Kong)建築学院准教授のマーク・オーレル・シナーベル氏は、2011年度「World 16」プロジェクトの研究成果として「UC-win/Road対応の『Manga-Me』、デジタル・マンガ作画手法(Digital Manga-Me Style for UC-win/Road)」を発表した。

 これは、同年夏のワークショップ以来、同大のインガー・チュイ(Yingge Qu)氏と共同で取り組んできたもの。シナーベル氏は研究の背景に関連して、3次元VR(Virtual Reality)ソフト「UC-win/Road」の独特なインターフェースと併せ、マンガ特有の様式および表現の仕方への注目を述べる。

 そこで、同氏らはマンガの作画プロセスにデジタル技術を活用。作業の効率化を図るとともに、さまざまな効果を実現する手法として「Manga-Me(マンガ・ミー)」を開発している。同プロジェクトでは、それを写真に加え、UC-win/Roadで作成した3D・VRにも適用。静止画や動画への対応をはじめ、UC-win/Road自体の機能を反映した多様かつ新しいマンガ表現の可能性を探った。

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「Manga-Me」のポイントとなる考え方
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 こうした伝統的なマンガ作画法の課題に対するソリューションとして、シナーベル氏らは、コンピュータ上で写真を変換し、マンガ的な表現の画像を効率的に生成するシステム「Manga-Me」を開発した。

 「Manga-Me」は写真を基に、前述のスクリーニングの各要素(トーン、カラー、シェーディング、およびテクスチャ)などを詳細に吟味。カラーの識別もさまざまなスクリーンのパターンを変えることで対応し、背景の豊かなマンガ表現を実現する。
「第5回 国際VRシンポジウム」リポート(5):<World16>(2011年)研究発表3
Report on the 5th International VR Symposium (5) : The 3rd Presentation of “World 16” 2011

UC-win/Road対応の「Manga-Me」、デジタル・マンガ作画手法
Digital Manga-Me Style for UC-win/Road

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By 池野隆(Takashi IKENO)

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(掲載 10/10/2012)

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