ウィンストン・セーラム州立大学
教養学部(3Dアニメーション)アシスタントプロフェッサー
トーマス・ジェームズ・タッカー

Thomas James Tucker,
Assistant Professor in 3D Animation, College of Arts and Sciences, Winston-Salem State University


(写真は潟tォーラムエイト 提供)
(Photo provided by FORUM8)
T. Tucker

 ウィンストン・セーラム州立大学(Winston-Salem State University:WSSU)教養学部アシスタントプロフェッサーのトーマス・ジェームズ・タッカー氏は、ザーイド大学ドバイ校総合科学部造形学科准教授のロナルド・ホーカー氏(Ronald Hawker, Associate Professor, Department of Art & Design, College of Arts & Sciences, Dubai Campus, Zayed University)らとの共同プロジェクトについて発表した。

 米国ノースカロライナ州フォーサイス郡ウィンストン・セーラム市にキャンパスを置くWSSU。タッカー氏はそこで、3Dアニメーションおよびゲーム制作を教える。これに対し、ホーカー氏の専門は美術史。近年、都市部を中心に大規模な開発が進むアラブ首長国連邦(UAE)において、その取り巻く自然環境を反映し独特な伝統を留める建造物に着目した研究を続けている。

 タッカー氏自ら、歴史家とビジュアルアーティストによる「きわめてユニークなコラボレーション」と形容する、両氏の連携作業は7年に及ぶ。この間、UAEの歴史遺産を可視化する技術と手法の開発に努めてきた。当初はゆっくりと動き出したプロジェクトだが、当該エリアをGPS測量するための助成取得が弾みとなり、3D CGソフトMayaを用いながら3Dライブラリアセットを蓄積してきたと振り返る。

By 池野隆(Takashi IKENO)
(掲載 2/25/2011)

Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment

今回プロジェクトの狙いとバスタキヤ地区

 前回(2009年)のラス・アル・ハイマ(Ras al-Khaimah)を中心とする歴史的町並みの再現に続く、今回プロジェクトの舞台となったのは、ペルシャ湾に繋がる入り江(Dubai Creek)沿いに位置するドバイのバスタキヤ地区(Bastakiya district in Dubai)。3Dゲーム開発へのモデル利用も視野に、その1880年代から1920年代に至る間の当該エリアがどのようなものであったかを再現するVR(Virtual Reality)シミュレーションの生成を目指した。

 そこは、イラン南部からUAEへの移民が定着したところとして知られ、地域に関する情報も多い。ただ、バスタキヤ市街の西半分は1970年代後半に取り壊され、現存する家屋の多くは1990年代初めに復元されたものという。それが現在は、ドバイの主要な観光スポットの一つとなっている。その一方で、交通渋滞や駐車場問題を来してきたこともあり、学術面はもちろん実用面からもVRシミュレーションの利用が期待された。

VRシミュレーション作成の体制と流れ

 VRの作成に当たっては、当時の時代を映す建造物はもちろん、人や車、ラクダ、ヤギ、ロバといったキャラクターが地域内を動き回る様子も再現するため、それらをすべてゼロから作り上げる必要があった、とタッカー氏は語る。

OldDubai
オールド・ドバイは、ホール(アラビア語でcreek=入り江のこと)あるいはザ・クリークと呼ばれるラグーン(潟)の周辺に集中している。そこには3区域があり、そのうち、1900年代に複数の統治者が割拠したシンダガ、そして南イランからの移住者によって占められる有名なバスタキヤの2地区が図内に見える。
Old Dubai is concentrated around a lagoon referred to as either the Khor (Arabic for creek) or the Creek. There are three districts, of which we are looking at two: Shindagha where the rulers were located in 1900 and Bastakiya, a famous quarter dominated by emigrants from southern Iran.

(画像はトーマス・ジェームズ・タッカー 氏 提供/(有)ライティング・ソリューションズ 訳)
(Images provided by Thomas James Tucker/Translated by WritingSolutions Ltd.)

 そこで同プロジェクトでは、WSSU、フォーサイス技術コミュニティカレッジ(Forsyth Technical Community College:Forsyth Tech)、ピードモント・コミュニティカレッジ(Piedmont Community College:PCC)の3大学(いずれもノースカロライナ州)が連携し、およそ一年間かけてモデルおよびアニメーション画像を作成。さらに、タッカー氏とホーカー氏が中心となって3DリアルタイムVRソフトUC-win/Roadを利用。それらを補完する形で、UAE域内の地形パッチを作成し、有形無形の同国歴史文化に関する空間次元(spatial dimensions)を探索・説明するための映像や音声、写真、イラストといったデータ資産(assets)の統合を図った。その具体的成果として、VRシミュレーションとリンクしたビデオPop-upの作成に取り組んでいる。
 タッカー氏はまず、WSSUの学生らがMayaを使って実際にモデルを作成し、UVマッピングを行い、後に動きを表現する上でカギとなるキャラクターの骨格を設定する様子などを映像で示しながら、モデルやアニメーション、モーションキャプチャデータをVRシミュレーションに取り込んでいく流れについて解説する。
 WSSUの学部生にとって初めてのモデル作成は、そのコンセプトを理解する上で良い勉強(learning curve)になったと位置づける。その際、すべての建物が一定の連続性を持つよう作業を進めるため、同氏は複数のチュートリアルを作成。建物などの55種類のPDFから立面図をつくり、簡単なポリゴンメッシュを用いてモデルを作成したりする過程で、それらが非常に有効だったという。
 





      
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