「CIM ― 注目される、その展開と可能性」連載特集(2)

「第2回 データモデルセミナー」(土木学会・道路業務プロセスモデル検討小委主催)リポート
道路事業向けプロダクトモデルおよび業務プロセスモデルの構築へ ― 道路データモデルの提案アプローチ(2)


By 池野隆(Takashi IKENO)
(掲載 4/9/2014)

 (公社)土木学会土木情報学委員会「道路業務プロセスモデル検討小委員会」(小委員長:東京農業大学地域環境科学部造園科学科山崎元也教授)が2013年10月24日に開催した「第2回 データモデルセミナー」のポイントを紹介する連載の第2弾。

 今回セミナーのオープニングは、データモデルの関連トピックスとして、近年注目を集める「CIM(Construction Information Modeling(/ Management))」にフォーカス。CIM技術検討会の活動をベースに、そこでの3次元(3D)モデルの位置づけなどについて解説。これを皮切りに、道路業務プロセスモデル検討小委員会を構成する各分科会(WG)関係者がそれぞれの取り組みについて報告した。


「CIM技術検討会の取り組み」
建設情報に関する標準化、3Dモデル活用の流れ

 建設事業の企画、調査、計画、設計、積算、施工、監督・検査、維持管理・サービス提供といった建設生産システム全体を通じ、3Dオブジェクトなど先進のICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を駆使。これらのフェーズを一体的に捉え、一連の過程における関連情報を統合・融合することにより、その全体で生産性向上に繋がる新しい建設管理システムを構築しようという、「CIM」。

(一財)日本建設情報総合センター 建設情報研究所 研究開発部 部長 三橋勝彦 氏
 (一財)日本建設情報総合センター(JACIC)建設情報研究所研究開発部部長の三橋勝彦氏はまず、このCIMの導入促進を目的に、国土交通省がそれに関わる現行の制度や基準などについて課題を整理・検討するため2012年8月に設置した、「CIM制度検討会」に触れる。同検討会は国交省の本省や国土技術政策総合研究所、国土地理院、そのほか土木学会を含む建設関連の学会、研究機関、業界団体により構成。JACICはそこに、オブザーバーとして参加している。

 これに対し、民間主導で建設関連の研究機関や業界団体など11団体が加盟する「CIM技術検討会」はCIMを実現するためのさまざまな技術的検討を行う。同検討会には国交省がオブザーバーとして関わっており、JACICは共同してその事務局を務める。一方、国交省では同省直轄事業を対象にCIMの試行事業(CIMモデル事業)を実施。同氏は、これら3つを柱とするCIMの推進体制が2012年から形成されてきた、と説明する。

CALS/ECからCIMへ、建設情報利用の流れ

 公共事業への適用を視野にCIMの考え方が注目されてくる前段として、三橋氏はCALS/EC(Continuous Acquisition and Life-cycle Support / Electronic Commerce:公共事業支援統合情報システム)導入の流れを辿る。

 CALS/ECが求められた背景には、バブル崩壊後、わが国建設業の生産性が低下したのに対し、他の製造業のそれは悪条件の中でも着実に向上。生産性の面で建設業においても努力すべき余地があるのでは、と着想されたことがあった。

 そこで、公共事業のライフサイクルにわたって発生する図面や書類、写真などの各種情報を電子化。ICTの利用により、それらの共有・交換・連携が可能な環境を創出しようとの構想が描かれた。

 それに関連するエポックとして同氏は、建設省(当時)が建設CALSの整備の方向性を示した「建設CALS整備基本構想」(1996年度策定)、および同基本構想に沿って1997年度以降、期限を区切って具体的な実施計画が段階的に策定されたアクションプログラム(「建設CALS/ECアクションプログラム」、2002年度以降は「国土交通省CALS/ECアクションプログラム」に継承)を挙げる。

 ただ、当初は紙ベースの情報を電子化することが第一義に位置づけられた。それでも、当時はまだ普及し始めたパソコンがあるだけという状況下で、関係者の頑張りに大きく依存して推進された、とする。

 一方、パソコンをはじめ、3D CADやWebコミュニケーションなどさまざまなICTの進歩を背景に、それらを利用した実効ある建設業の生産性向上が提唱されてきた。そのような中、2012年春のJACICセミナーで国交省技監(当時)の佐藤直良氏が「CIMのススメ」と題して講演。CIMが本格的に指向される契機になった、と振り返る。
 次ページへ続く

Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment

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