東日本大震災を受けて
 「最近、とくに力を入れているのが(土木・建設分野の)関連するNPOとの連携です」

 土木・建設の世界は広範なエリアに及ぶ。その割に、NPOという比較的新しい体制による同分野での活動は期待されたほど普及・拡大していないのが現状という。そこで、社会基盤の整備・保全や環境など国づくり・街づくりに関わる複数のNPO法人が連携、情報交換しつつ、社会や行政に働きかけていくことで、社会貢献とNPO活動の活性化および発展を図ることを目的に「シビルNPO連絡会議」が2008年に組織された。

 シビルまちづくりステーション内に事務所を置き、花村氏が同連絡会議の代表も兼務。会員には2012年2月現在、シビルまちづくりステーションのほか、温故創新の会、国境なき技師団、国際建設機械専門家協議会、シビルサポートネットワーク、社会資本アセットマネジメントコンソーシアム、橋守支援センター、人と道研究会、風土工学デザイン研究所、横浜にLRTを走らせる会、リサイクル技術振興会 ― の11NPO法人が名を連ねる。

 同連絡会議では現在、各会員の活動を報告し合う中で、相互理解を図るとともに連携による可能性を模索しているところ、と花村氏は語る。

 一方、建設系NPO法人の多くが財政面をはじめ事業運営上の課題を抱えていたことから、土木学会でも2007年にそうした問題への対策の検討に着手。そのソリューションとして、建設系NPO法人に特化した中間支援組織の利用が注目された。

 中間支援組織は、行政と地域、あるいは官と民、民と民の間で触媒機能を担いながら、さまざまな活動を支援するもの。NPO法人の増加を背景に、NPOなどへの支援を目的として多様な形態の設置が進んでいる。

 ここでは、いろいろなNPOが抱える、自分たちだけでは対応しきれないような問題を視野に、土木学会主導による新しい機能を介在させることで建設系NPO法人の活性化につなげることを目指す。例えば、補助金や税制、規制などに関わる行政側の情報をNPOに仲介する機能(官と民との間の触媒機能)、およびNPO単独では制約のある活動に際して複数NPOの連携をコーディネートする機能(民と民との間の触媒機能)などが想定されている。ただ、個々の機能についてはまだ可能性が案出されている段階で流動的な要素もある、と花村氏は解説する。

 土木学会では、2010年に設置された「建設系NPO中間支援組織設立準備委員会」での検討を経、「建設系NPO中間支援組織設立準備会」において具体化に向けた検討が進展。「新しい公共」が作り上げる社会での可能性に関する認識・理解を深めるとともに、「新しい公共」の担い手となる建設系NPOを支援するための「中間支援組織」設置を目的とする「建設系NPO連絡協議会」の設立(2012年4月)に向けた準備が進行中という。

 そのほか、シビルまちづくりステーションでは新疆大学沙漠緑化協会日本支部(Green Flag Japan)や船橋市民協働推進連絡会など外部の活動とも積極的に連携。ネットワークを活かし、同NPOが保有する技術や知識のより効果的な展開につなげている。

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Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment

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 東日本大震災は、シビルまちづくりステーションの取り組みにも少なからぬ影響を与えている。
東日本大震災調査(宮城県気仙沼市、2011年5月)
 2012年3月の震災発生を受け、同NPO西日本支部を中心に救援物資の手配および提供を開始。併せて、シビルNPO連絡会議に呼びかけ、建設系NPOによる被災地救援・復旧・復興支援活動について議論。それを踏まえ、4月に千葉県浦安地区、7月に同船橋地区における液状化の被害状況を調査。また、5月には被災地に調査団を派遣した。

 6月の同NPOの総会では建設関連の他のNPOも加わり、復旧・復興支援活動のあり方について再度議論。芝生化事業の一環として、被災地内への芝生移植などを実施。10月には同NPO内
東日本大震災被災地にある幼稚園での芝生化活動(宮城県七ヶ浜町、2011年7月)
(写真はいずれもシビルまちづくりステーション提供)
に「液状化対策プロジェクト」を立ち上げている。

 とくに液状化問題は被害が深刻であるにもかかわらず、広域にわたることもあり行政の対応が十分でなく、市民の側で現実的な対策を取れないといった問題が指摘された。そのため、同プロジェクトでは専門家の研究をベースに、液状化についてどう対応すべきかを行政や市民に分かりやすく提示。同NPOの特色を活かした災害安全対策を推進していく、との方針を掲げる。

 こうした一連の活動を通じ、花村氏は建設系NPOの連携による可能性の広がりに期待を示す。その意味からも、NPO自らの情報発信と、NPO同士が連携して新しい事業に取り組めるプラットフォームの整備が重要になると見る。
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建設系NPOが連携する「シビルNPO連絡会議」
土木学会でも中間支援組織具体化の動き
建設系NPO連携の流れ
専門家の技術や知見を結集、新たな社会的機能の展開へ
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